パワーショルダー
「うわっ!」
前傾姿勢でショルダータックルをしかけてきたコングを、紙一重でかわしたクレアだったが、身につ着けている衣服の一部がコングの突進によって発生した風圧で破けていたことに気付き、その顔は心なしか青ざめていた。
「…とんでもない化け物ね…」
まともに戦ったら…と言うより、こんな奴とまともに戦うことなど不可能だ。
(…毒舌冷血漢の方がまだマシだったかも…)
冷や汗をかきながらクレアはそんなことを考えていた。
「あちゃぁ〜」
シンは額に手を当てた。
準決勝が始まるまで時間があったので、シンはその間にトイレに行っていたのだ。トイレには問題なく行けたのだが、トイレから観客席への道筋を忘れてしまった。
つまり、シンは迷子になっていた。
観客席からは一際大きな歓声が聞こえてくる。
「もう試合始まっちゃたよ〜」
情けない声を出しながらも、何とかして自分の席に戻ろうとするシン。
だが…
(…これは…!)
怒り、憎悪、様々な負の感情が自身に向けられているのを感じる。その中でも最も強く感じるのは、明確な殺意。有無を言わさずにこの場でシンを殺しかねない程の殺気だ。
ここで戦闘になると被害が大きくなる。
そう判断したシンは、来た道を戻り、逃走を試みた。